丹波古陶館開館50周年記念「工藝の神無月」
家の書架にあった『丹波の古陶』を手にし、見るようになったのが高等学校に入った頃でした。内表紙に「中西幸一様 柳宗悦」の署名があり、発刊された昭和31年に我家がいただいたものです。よく見ると文中のところどころに鉛筆で線が引かれていました。祖父か、父が重要で心に留めた箇所を強調するための手跡であろうと思いました。その中で、次の言葉が私の胸を突き刺しました。「不思議であるが、不完全な品であっても、不完全さが、そのまま、完全を求めた品より、もっと自由で確かでしかも温かい。綺麗さを許さないことが、そのまま渋さの深さに入る」の一文です。年齢を増して幾度も幾度も読み返すうちに、これは、古丹波を通じて見た柳美学の一つの到達点ではないかと感じるようになりました。
本年で丹波古陶館は半世紀を迎えました。その間、全国の工藝作家との永きに亘る交流によって、私立の美術館でありながら、豊かな文化施設として成長させていただいたことに感謝の思いが湧いてきます。「現代に生まれ活きる工藝」にかかわる仕事は、古丹波の保存と顕彰に加え、丹波古陶館に課せられた使命であると原点に返り考えています。
会期中には哲学者鞍田崇氏の講演会も開催させていただきます。町並に賑わいを見せる十一月……。篠山地方在住と当館ゆかりの工藝作家による第六回「工藝の神無月」展に、ご来場賜りたいと心より願うものです。
丹波古陶館館長 中 西 薫
名称 | 丹波古陶館開館50周年記念「工藝の神無月」 |
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開催日時 | 令和2(2020)年10月8日(木)〜11日(日) 午前10時〜午後5時 ※マスクご着用のうえ、ご来場ください |
出展作家 | 招待作家 二階堂晃子(染織)・小谷栄次(硝子)・大塚誠一(陶) ゆかりの作家 小川靖弘(染色)・小川裕惠(染色) 地元作家 小島優(椅子)・平山元康(陶)・野澤裕樹(木工)・児玉正和(木工) |
会場 | 鳳凰会館〈入場無料〉 丹波古陶館前[国重要伝統的建造物群保存地区内] 〒669-2325 兵庫県丹波篠山市河原町180 |
同時開催の催し | 記念文化講演会 「現代に民藝を問う ― いきる力が美をつくる」 講師 鞍田崇先生 日時:令和2(2020)年10月10日(土) 午後2時〜 講師:鞍田崇先生(哲学者、明治大学理工学部准教授) 会場:鳳凰会館(当館前) 入場無料 ※マスクご着用のうえ、ご来場ください |